DXの課題と成功の鍵

企業のデジタルトランスフォーメーションの取り組みが本格化

インダストリー4.0(第四次産業革命)により、全世界で100年に1度と言われる変革期が到来しています。新たなデジタル技術を活用して、革新的なビジネスモデルを展開することで異業種の市場に参入する企業や、全社の業務を改革し、業務効率・業務品質を大幅に改善している企業も増えています。先進的なデジタル技術を活用し、外部環境の脅威に対応し新たな市場を切り開く攻めの戦略と、自社のビジネスプロセスを再構築して収益力を磨く守りの戦略、この両面から取り組むことが求められます。

2018年末には、経済産業省が「DX推進ガイドライン」を取りまとめました。これは経営者が把握するべき事項や、取締役会や株主が企業のDXの取り組みについてチェックするべき項目を扱ったものです。このガイドラインが政府主導で作られたことからもわかるとおり、いまやデジタルトランスフォーメーション(以下 DX)は本格的な潮流になりつつあります。

企業のデジタルトランスフォーメーションの取り組みが本格化

IT専門調査会社であるIDCのレポートによると、国内企業の実に98.7%がDXと企業戦略について何らか連携しています。ただし、その過半数が部分的・短期的な連携にとどまっているのも実情です。一方で先進的な取り組みをしている企業では、DXと企業戦略が全体的・長期的な連携をとっている傾向にあります。

今後はあらゆる企業が「デジタル企業」へ進化することを求められており、進化できなかった企業は「デジタル競争の敗者」になると言えるでしょう。

なぜデジタルトランスフォーメーションに
注目が集まっているのか?

なぜデジタルトランスフォーメーションに注目が集まっているのか?

デジタルテクノロジーを使って、ビジネスの強みを作り上げてきた企業は、企業規模にかかわらず、既存の産業の枠組みを破壊する力を持つようになりました。異業種から参入してきた企業がまったく新しいビジネスモデルを展開することで、盤石のシェアを確保していた企業が大きくシェアを落とすというのは実際に起こっている現象です。

いままで想定していなかったまったく新しい形のビジネスモデルを持つ企業の参入に対応するには、自社の顧客体験の価値を向上させ、収益力を改善することで対応するとともに、自社でも新たなビジネスモデルを創出して競争優位を獲得していかなければなりません。

IDCでは、DXを次のように定義しています。
・外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応する
・内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引する
・デジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出し、競争優位を獲得する
つまり、DXは、AI、IoT、クラウドといったデジタルの力で企業活動すべてを変革することを意味します。DXは単なるデジタル技術の活用ではなく、デジタル企業に進化するための経営戦略そのものと言えます。

そして、デジタル技術を活用するにはデータが必要です。経済産業省は「Connected Industries東京イニシアティブ2017」の中で、現時点では会社単位、部門単位でしかデータが共有されておらず、有効活用できていないという問題を指摘しています。データが広く共有されれば、最新のテクノロジーによって生産性が向上し、提供するサービスの質が向上し、イノベーションが生まれる未来予想図が見えてきます。

豆蔵が考えるDXも、まさにあらゆるものをデータ化・数値化する「デジタライゼーション」です。あらゆる事象をデータ化・数値化して広く共有すれば、AIがデータを学習することにより革新的なビジネスモデルの開発や飛躍的な生産性の向上が実現します。

デジタルトランスフォーメーションが
進まない企業にはワケがある

多くの経営者がDXの重要性を認識しているにもかかわらず、日本の企業はグローバルの企業と比較してDXの取り組みで大きく後れをとっています。

デル テクノロジーズの調査(※)では、DXの達成段階・5段階中トップの「デジタル・リーダー」(DXが自社のDNAに組み込まれている企業)は日本では全体の2%にとどまっています。さらに、最も多い39%が、「デジタル後進企業」(デジタルプランがなく、イニシアティブや投資が限定されている企業)となっています。グローバルではデジタル後進企業がわずか9%であることから、日本がいかに遅れているかがわかります。

企業はDXを進めるうえでさまざまな問題を抱えています。よくあるのが、デジタル専門部署を設置したものの、経営層からはビジネスに対する明確なビジョンがなく、「とりあえずAIを使って何かをやれ」という指示しかなかったというケースです。指針がないままに何らかの実績を上げなければならず、AIありきのPoCを繰り返し、疲弊してしまうという問題を引き起こすこともあります。

デジタルトランスフォーメーションが進まない企業にはワケがある

また、事業部門のIT部門任せもよくあるケースです。事業部門がオーナーシップを持ってシステム構築に取り組まなければ、ビジネスをどのように変えていくかということについて議論ができず、せっかく投資をしても競争力強化につながらないシステムばかりが作られてしまいます。

経営層の「新たな挑戦」に対する理解も課題の一つです。データをAIで予測できても、うまく活用して成功するかどうかはやってみなければわからないという特性があります。失敗に対して理解が得られず、成果が出せないうちに、予算が縮小されてしまった例も少なくありません。従来のIT投資とは異なる考え方、進め方が求められています。

(※) https://corporate.delltechnologies.com/ja-jp/newsroom/announcements/2019/01/20190129-1.html

進まない最大の要因は「人材」

このようにDXの実現には数多くの障害がありますが、中でもDXが滞る最大の要因は「人材」です。

企業がDXを実現するためには、自社を取り巻くビジネス環境の脅威や社内の課題を分析し、新しいデジタル技術で何ができるのかを把握して企画を立てられる人材が求められます。しかし、企業にはこのようなデジタル技術の使い手となる人材が少ないのが実情です。

人材が不足する原因の一つに、システム開発をITベンダーへ丸投げするケースが多いことが挙げられます。そのため日本では、欧米と比較してITエンジニアがユーザー企業よりもベンダー企業に集中する傾向にあります。

IT技術者の不足も原因の一つです。「DXレポート」によれば、2015年にはIT技術者の不足人数は約25万人でしたが、2025年には約43万人まで拡大します。こうした人材難に加えて、AIなど最先端の技術を使いこなす人材は、現時点では絶対数が少ないという実情もあり、外部から人材を調達するのは熾烈な競争に投資することになり、そこには採用のミスマッチというリスクも潜みます。

進まない最大の要因は「人材」

人材不足を解決するために、先進的な取り組みをしている企業では、自社のビジネスを熟知している社内の人材をDX人材に転換しています。専門部署だけでなく事業部門においてもジタル技術の使い手として、DX人材を育成することを狙いとしています。

DXは、デジタル技術の活用に目が向けられがちですが、営業・製造現場のビジネスプロセスにも深くかかわっています。ビジネスを熟知した社内の人材を育成することで問題を解決することができます。