人材育成による組織づくり

デジタルトランスフォーメーション推進に
適した人材とは?

IPAが発表した「IT人材白書2017」では、DXに取り組む企業へのアンケートを行っています。アンケートによると、DXは業務の部分的なデジタル対応による効率化ではなく全社的な取り組みのため「DXは経営者と現場に近い複数のリーダーが一体となって進めていくべきだ」という回答の割合が高いという結果になりました。

さらにアンケート結果では、リーダーの役割として以下のものが挙げられました。
・デジタル化を進めるための具体的施策の決定
・デジタル関連の新事業を実施
・経営者への提言

デジタルトランスフォーム推進に適した人材とは?

そのうえで、デジタル化を推進する人材に必要な能力については以下のものが挙げられました。
・他人を巻き込む力
・ビジネスの知見
・デジタルの知見

能力について補足するのであれば、DXは多くの企業にとって前例のない取り組みです。やるべきことが明確ではなく、企業活動でさまざまな役割を持つ人々で議論しながら手探りで進めていく場面が頻繁に起こりえます。そこで、多くのステークホルダーを巻き込み、合意形成を重ねてプロジェクトを推進する人材が、企業のDX推進活動にも適性があると言えます。

社内で人材を育成する場合は、「他人を巻き込む力」「ビジネスへの知見」を持つビジネスリーダー、あるいはその素養を持つ人材を選出し、自身で動く、他者を動かすためのデジタル技術や新事業創出のプロセス実施についての育成をしていく必要があるでしょう。

また、育成と並行してDXをスムーズに進めるための環境づくりにも取り組む必要があります。前文でもご紹介しましたが、試行錯誤による挑戦を評価する企業風土とさまざまな分野に智恵と知見を持つ外部スペシャリストとの人的ネットワーク形成がDXの推進力を相乗的に高めます。

DX推進に適した人材は、果たして
自社に存在するのか?

DX推進に適した人材は、果たして自社に存在するのか?

ビジネスリーダーの育成が急がれますが、DXは新しい領域のため即戦力、すなわち専門的な知識や資格を持ち経験豊富な人材がいるわけではありません。多くの企業が、DXを推進するリーダーとなる人材を探すことについて頭を悩ませています。

しかし、豆蔵がこれまで支援した多くの企業では、DXに求められる人材を社内で育成することに効果を出しています。DXを推進する人材となるポテンシャルを持つ人材は実はたくさん社内にいて、それに気付いていないだけかもしれません。さらに言えば、正しく育成できれば誰でもDXを推進する人材になれる可能性があります。重要なポイントは、「ビジネスへの知見」として特に自社のビジネスを十分理解していることです。DXを推進する立場であれば、デジタルやテクノロジー分野に特化したスキルを持つ人材を外部から採用するよりも、自社のビジネスや業務が身についている人材の方が推進役としては適していると言えます。

豆蔵が支援したある企業では、DXを推進するミッションを持つ専門部署を作るにあたり、社内公募を行い、DX推進に意欲を持つ人材を確保しました。公募の意欲を新たな領域に取り組むポテンシャルとして評価し、担当に任命することで、企業内人材のモチベーション向上にも波及しました。

また、ある企業では、DX推進をビジネスから思考し、IT部門に丸投げとなることを避けるため、ビジネスプロセスの核となる事業部門からリーダー格の人材を選出しました。その結果、その専門部署では、非IT部門の人材割合が約8割となり、事業部門とIT部門の橋渡しとなることで実行上の乖離が少なくなり、ビジネスにインパクトのある新規事業の創出やシステム全体の最適化に取り組むことができました。

DX推進に適した人材は、社内に必ず存在します。適性のある人材を育てていくことでDXの実現が見えてくるでしょう。

DXを推進する人材の育成に必要な
3つのポイント

DXはビジネスにインパクトを与え、業績に貢献するということが最終的な目標となります。技術起点ではなく、ビジネス起点でのDXを成功させる人材を育成するには3つの観点から施策が必要となります。

・組織、業態に合った育成計画

DXはあくまでも自社のビジネスにインパクトを与えるものでなければいけません。画一的な教育ではなく、企業の組織体制・業態に応じて、どのスキルをどういう方法で身に付けるかを設計する必要があります。

DXを推進する人材の育成に必要な3つのポイント

・ビジネスに沿った実践的なテーマ

知識の詰め込みを目的とした研修だと受講して終わり、ということにもなりかねません。企業に合ったテーマで実践的なプロジェクトを通じて経験を積み、知識をビジネスに応用できるスキルの定着を図る必要があります。

・最新技術と具体事例の積極的な収集

最新のデジタル技術を新しい事業に結び付けていくためには、常に新しい方法論や技術情報を外部から取り入れる必要があります。専門的知見のあるスペシャリストや同様の取り組みをする他の企業と連携し、自社の進め方を確立していくのも一つの方法です。

人材育成は一朝一夕になしえるものではありません。DXの早期実現による競争優位を確立するためにも、早急に取り組むべき課題と言えます。

DXを推進する人材の
効果的な育成方法とは?

社内にDX推進の風土を根付かせるには、DX人材の育成と並行して、社内全体のデジタルリテラシーを向上させることが大切になります。

・DX人材の育成方法

デジタル技術の知見を身に付け、自社にどのように活用していけば価値があるのかを見つける感覚を磨くことが中心となります。

知識を学ぶだけでなく、PoC(Proof of Concept=概念実証)を通じて実用化できる取り組みを実行していくことが求められます。最近になり、教育ベンダーからは、DX推進で必要となる技術知識やフレームワークなどのテクニックの知識を習得する研修や講座の提供が始まっていますが、習得した知識が次のアクションにつながらないという声も聞かれます。

組織で活躍するDX人材の育成のためには、個人がそれらの講座を受講して知識を得るだけでなく、組織として成果を出すための実践的な取り組みを積み重ねていくことが求められます。そのためにも、企業のビジネス、業務を理解し、伴走型の育成手法を持つコンサルタントの存在が不可欠となります。

DXを推進する人材の効果的な育成方法とは?

・デジタルリテラシー向上の施策

DXの対象は企業活動全体にわたるため、働くすべての人にDXの取り組みの目的を理解し、意欲的に取り組む風土をつくらなくてはいけません。組織のデジタルリテラシーが向上することで、特定の状況に対して適切なデジタルツールを用いた業務への適合を発案、定着させることができるようになります。

デジタルデバイスを使った情報収集、収集情報の信頼性評価や活用といった業務を実践するためには、デジタルツールの利用に加えて、インターネットの基本的な概念やセキュリティ知識などを社内全体で学ぶ機会を設けることで、組織のDX推進の取り組みも大きく前進することでしょう。